敦煌(とんこう)は、中国甘粛省北西部の都市で、かつてシルクロードの分岐点として栄えたオアシス都市です。近隣にある莫高窟とそこから出た敦煌文書で有名です。敦煌の名前は後漢の学者応劭によると「大にして盛ん」と言う事ですが、実際には紀元前からこの地を支配していた月氏の言葉の音訳であるようです。
敦煌は青蔵高原の北縁、河西走廊の西端にあり、古くから中国と西域との出入口として使われます。西にはタリム盆地が広がり、北にはゴビ砂漠、南は祁連山脈とツァイダム盆地を望みます。 年平均気温9℃、降水量39mm。作物は主に綿花、小麦、トウモロコシ、果物などあります。約250キロメートル東に玉門、300キロメートル北に新疆ウイグル自治区のクムル(ハミ)が位置しています。
漢が河西回廊(現在の甘粛省)を制圧すると、敦煌の西に防御拠点の玉門関と陽関が設置され、漢の西域経営の中心地となり、西方からの汗血馬・葡萄(ブドウ)・ゴマなどの産物や仏教がこの地を通って漢に運ばれ、漢からは絹が西方へと運ばれました。漢にとっての経済・軍事に於ける重要な拠点となり、豊かな土地と防衛拠点としての使命から厳しい政治を避けると言う事があり、税も物価も安く、住民は平和と豊かさを楽しんでいました。
魏晋南北朝時代は仏教が中国に布教した時代でもあり、この地では竺法護などの僧が西方よりやってくる経典の訳に励み、布教に大きく貢献しました。また366年から僧楽僔によって莫高窟の掘削が始まっています。莫高窟は1987年に世界遺産に登録され、観光名所として栄えています。
また、1988年6月25日公開の日本映画【敦煌】は敦煌をロケ地として、井上靖の小説「敦煌」を映画化したものです。1989年に日本アカデミー賞・最優秀作品賞・監督賞受賞作品を受賞しました。